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ビーサン通勤
- 2008/07/15(火) 07:20:19
グッド・イブニングAmerica:ビーサン通勤=大治朋子
「お、かわいいね」。友達の英国人女性記者、アンディ(31)の履いていた赤い鼻緒のビーチサンダル(以下ビーサン)に注目していると、「いいでしょ」と、ちょっと自慢げに笑った。
働く女性の「ビーサン通勤」。米国ではかれこれ3年以上続いている流行だが、面白いのは洋服がTシャツやジーパンではないところ。ブラウスにジャケットとキャリアウーマン風の女性の足元が、なぜかビーサンなのだ。
女性服の店には、夏場になるとビーサン売り場ができる。歩く時の音から、英語では「flip flops(フリップ・フロップス)」と呼ばれ、Y字形の鼻緒に平らなゴム底というのが特徴。シンプルなものは2000円以下、ビーズや飾りのついたものは5000円ぐらいと幅広い。最近では宝石のついた8万円の超高級モノも登場して、話題を集めた。ヒールに比べ、足元がラクで涼しいのが人気の秘密だ。
ところがこのビーサン通勤、「常識派」にはウケが悪い。米商務省は昨夏、ビーサンでの出勤禁止令を出した。企業の中には「ドレス・コード(服装規定)」に反する、とビーサンで来た社員を自宅に追い返した例もある。
80年代、スーツにスニーカーで出勤する米国の女性の姿が話題になったが、彼女たちの多くは職場でヒールに履き替えていた。アンディも「取材の時はヒールに履き替える」そうだが、ビーサンはおしゃれなデザインも多いので、オフィスでそのまま履いている女性も目立つ。おまけにペタぺタと歩くたびに音がするので「耳障り」「職場をナメてる」と風当たりは強い。05年夏、女子大生のグループがホワイトハウスのブッシュ大統領をビーサンで表敬訪問。「礼儀知らず」とたたかれて以来、夏になるとこうした「ビーサン論争」がメディアで始まるのだ。
しかしその割には今年も流行は健在だ。私は、足元が冷えるというレトロな理由でビーサンは苦手だが、一般的には必要に応じて履き替えればOK、という立場。でも米国の若者は、もっとゆるい。IT関連企業などでは短パンもOKで、若者の人気を集めている。就職あっせん会社によると、若い世代ほど服装に厳しい会社を嫌うという。
常識派は今も、「服装は名刺がわり」と譲らない。でも、あんまりこだわりすぎると優秀な若者を逃しかねない。しぶとく続く流行の背景には、そんな職場の微妙な駆け引きもあるようだ。(ワシントン支局 大治朋子 )
毎日新聞 2008年7月14日 東京夕刊
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